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     Side~響子~
 
 響子 (望まれて来たは良いけれど…)
 
 私、五十嵐響子は、スカウトされてここにいます。
 必要としてくれる人がいるなら、その人のためにやってみようかな…
 そんな感じで上京してきた私は、アイドルになるためにレッスンをしている他の娘たちに圧倒され続ける毎日。
 アイドルの基礎レッスンとはいえ、本格的に歌もダンスもしてこなかった私は、付いていくどころか自分の動きを整えるだけで精一杯。
 なんだか取り残された気持ちで、他の娘たちともあまり打ち解けていけないし…
 
 響子 (肝心のプロデューサーは、また各地を飛び回っているみたいだし)
 
 上京する時に弟たちが茶化して言った 「姉ちゃん騙されているんだって、田舎者は騙しやすいとか思われてるって」
 そんな言葉が頭をよぎる度に、いやいやいやいや、絶対にそんな事は無いし、と、自分に言い聞かせつつ、ついつい故郷のことが気になってしまい、気晴らしにちょっと散歩に出てみたのでした。
 
 響子 「ホームシック…とまではいかないけど、誰かをお世話してみたいなぁ~」
 世話好き…とはよくいわれますが、そんな私の呟きに答えるかのように、私の目を引く不思議な光景…
 
 響子 (外国人のお姉さんかな?なんだかきょろきょろしているけど…)
 同じぐらいの年代と見えたのが後押ししたのか、私は迷うことなくその子に声をかけにいったのでした。
 

     Side~ナターリア~
 
 ナターリア 「エェっと…このプロダクションへ行くの、後はどこへ行けば良いんダ?」
 
 日本へ来たのは良いけど、オーディションの日に迷っちゃったヨ。
 こんなことなら、おにーちゃんの言ってたシタミをしておけばよかったナ。
 でも、日本の人はみんな親切だからナ、ここに来るまでもモヨリエキって言うのを教えてもらったしナ。
 
 そんなナターリアの心の声に呼応するかのように、同年代の外国人が困っている様子なのを、見かねた親切な女の子が声をかけてきた。
 
 少女 「あのー、お困りじゃありませんか?」
 
 声をかけられたナターリアがその方向を見ると、栗色のロングヘアーをサイドポニーにまとめている美少女だった。
 
 ナターリア (日本にはアイドルじゃなくてもこんな可愛い娘がいるんダナ)
 

 サイドポニーの少女 「えーっと…日本語、わかります?」
 
 ナターリアが少し見とれていたのを、言っていることがわからないのかと判断したようで、少女は不安な面持ちになったが、それでも見捨てる様子はなく、むしろ距離は近付いている。
 
 ナターリア 「アッ、ご、ゴメンな、日本語わかるヨ、あんまり上手くないケド…」
 サイドポニーの少女 「よかったぁ~声をかけたのはいいけど、私は日本語しか出来ないんで」
 ナターリア 「大丈夫、わかるヨ、エエっと、このプロダクション…に、行きたいんだケド…」
 
 ナターリアに見せられたメモを、見た少女の表情が明るくなる。
 
 サイドポニーの少女 「よく知ってますよ、私も今から行くので、一緒に行きませんか?」
 ナターリア 「良いのカ? ナターリア嬉しいゾ!」
 
 というが早いか、少女にハグしてしまうナターリア。
 ナターリア (あ…おにーちゃんに言われたナ、すぐハグしちゃダメだって)
 それを思い出してすぐに離れるナターリア、少女は驚いてはいるが、怒ってはいないようだ、すぐに笑顔に戻って
 
 サイドポニーの少女 「あはっ、やっぱり海外の人は積極的ですね、ナターリアがお名前ですか?」
 ナターリア 「そうダ、ナターリアだぞ、よろしくナ」
 響子 「ナターリアさん、こちらこそよろしくお願いします、五十嵐響子です」
 ナターリア 「い、イガ…ら、シ?」
 響子 「ふふっ、響子です、キョーコ」
 ナターリア 「おおっ、キョーコ、キョーコ!」
 響子 「はいっ!それじゃあ行きましょうか」
 

     Side~ナターリア&響子~
 
 ナターリア (日本人はやっぱり良い人ダゾ、ところでなんでキョーコは一緒に行ってくれるんダ?) 
 にこにこと先導していた響子から、それに関しては先に質問が来た
 
 響子 「ナターリアさんは、どうして日本へ?」
 ナターリア 「ナターリアは日本でアイドルになるために来たんダ、今日はオーディションを受けるんダ」
 響子 「あ、それでプロダクションに…そっか、そういえば今日は…」
 顎に指を当てて、軽く考える響子、定期的に行われているオーディションの日付が今日だった気がする。
 ナターリア 「キョーコはどうして一緒に行ってくれるんダ?キョーコもアイドルなのカ?」
 響子 「アイドル…とはちょっと違いますかね、まだ…」
 響子 (うーん、やっぱ言っちゃ駄目だよね…)
 ナターリア 「そうなのカ、キョーコ可愛いから、アイドルだと思ったヨ」
 響子 「可愛いですか? えへへっ、照れちゃいますね、ありがとうございます。
 ところで、ナターリアさんの歳は?」
 共に行く道中で、いくつか交わすだけの会話でも、どんどん仲良くなっていく時もある、それは最初に感じた自分と同年代だから? と思った響子が素直に疑問を口にした。
 
 ナターリア 「ナターリアは14歳ダゾ」
 響子 「ええっ、ナターリア14歳?! 完全に年上だと…」
 驚く響子の視線の先には、豊かに膨らむナターリアの胸が、確かに会話からは少し幼い感じもしていたけれど…
 響子 「あぁっ、ごめんなさい、驚いてナターリアって…」
 ナターリア 「ううん、ナターリアって呼んで欲しいゾ、キョーコにはそう呼んで欲しい!」
 響子 「じゃあナターリア…で良い?」
 ナターリア 「うん!キョーコはいくつなんダ?」
 響子 「私は15歳、ナターリアより一つ年上だね」
 ナターリア 「一つ違いのお姉さん、良いナ、キョーコみたいなお姉さん良いナ!」
 響子 (そっか、私、年上だと思いながら、弟たちとちょっと重ねちゃってるんだ…)
 
 慣れない東京での生活で、弟たちを懐かしむ気持ちが膨らみつつある中、異国で不安にしているナターリアに惹かれたのかもしれない…
 そんな響子の想いも重ね、会話も弾み、そして目的の場所へ辿り着いた。
 
 響子 「ここのビルだから、後は中に入って訊いてくださいね」
 ナターリア 「ありがとキョーコ、おかげでちゃんと辿り着けたヨ」
 響子 「どういたしまして、私も楽しかったし、ナターリアにパワーを貰ったよ」
 ナターリア 「ん? なんかよくわからないケド、また、会えるカナ?」
 響子 「きっと会えるよ、オーディション、頑張ってね」
 ナターリア 「うん! ナターリア頑張ってアイドルになるヨ!」
 大きく手を振ってビルの中に消えていくナターリア、その姿を見送りながら、響子もまた気合いを入れ直していた。
 響子 (ちょっと弱気になっちゃってたけど、地球の裏側からアイドルになるために来るんだ、負けてられないな!)
 
 この二人の再会は、近い時期に起こること、そして二人はもう少し大きな舞台でも共にするが、それは別の話でのこと…
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